がんちょう堤

 むかし、あるお寺に願長という住職がおった。
 その願長の仲人によって、すぐ近くに住んでいた娘がとなりの町にお嫁にいくことになった。ところが、結納をすませたあとで、お嫁にはいかんちゅうて破談になった。そればかりか、願長に向かってお尻をまくってたたくと、
 「これを食らえ。」
ちゅうていうたんじゃ。 
 腹を立てた願長は、となりの町の金物屋で刃物を買って帰ってその娘を殺してしまったんじゃ。
 ところが、それ以来その辺の土地には、作物が育たんようになった。
 このことが津和野藩の殿様にわかって、
 「いったい、僧職にありながら人を殺すなんちゅうことはどうしてもおまえが悪い。そのつぐないに、大豆の俵を三里ケ浜まで並べられるほど納めるか、大きなため池をつくるか、どっちかをしたらお前の罪は責めまい。」
ちゅうお沙汰があったんじゃ。
 しばらく考えた願長は、
 「悪いことをしたのだから、後世に残る仕事をしよう。」
ちゅうて、村全体の田んぼをうるおすほどの大きな堤をつくったんじゃ。
 こうして罪滅ぼしに作られた池が、のちに、願長堤といわれるようになった。
 この大仕事には、にぎり飯用に、毎日一表の塩が使われたということじゃ。

語り手 石橋新一(川登)/城市重寿(松原)
岡崎寛一(白上)/竹内勝芳(川登)

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