「人麿が鎌で刻んだ岩

 戸田のことなんじゃけど、東光山ちゅうところに、人麿神社があって、そこに祀ってあるのが人麿様なんじゃあ。人麿が鎌で刻んだ岩
 今から、1,300年よりもっと前の話なんじゃがね。

 人麿神社のすぐ近くに語家という家があって、その家の前に、古い柿の木があったんじゃ。その柿の木のもとに、とつぜん七、八歳の頃の男の子が現われたんじや。
 びっくりした語家の人が、
 「どこからきんさったかね。」と聞くと、
 「わたしには家もなく、お父さんもお母さんもいない。知っているのは和歌の道だけです。」と、男の子は答えたといね。
 語家に引き取られた男の子は、だんだん大きゅうなると、田舎のことじゃけえ、山や田んぼの草刈りやなんかに連れていかれたんじゃ。
 ある日、近くの山に行った時のことじゃが、中腹の竹やぶの中に大きな岩があったんじゃ。男の子は、岩の上にあがると、手にもっとった鎌の先でね、いっしょうけんけんめいに、歌のようなもんを刻みよったんと。いまでも鎌のあとがある大きな岩が残っているんじゃが、岩に文字を刻んでいたその子は、あの歌の上手な人麿様だったということじゃ。

 人麿様は小さい時から、歌をつくることが大好きじゃったんだねえ。
 まあ古い話じゃが、わたしらあ親から聞かされたもんじゃ。

さしえ 戸田小学校6年 M・T
語り手 中島義一(小浜)

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