おば捨て山

 あるところにたいへんきびしい殿さんがおって、
 「この国は米や食料が少ないから、働けんような年寄りに食わしたんじゃあ国がもたん。働けんようになった年寄りは山に行ってのたれ死にせえ。年寄りをかくまったものは打ち首じゃ。」
と、いうおふれを出した。

おば捨て山

 ある日、このおふれにしたがって、ひとりの息子が年老いた母親を背負って山を登った。ところが、あんまり山奥まで来たので、帰り道の方角がわからなくなってしもうた。そしたら、
 「おまえが帰り道をまちがえんように、ここまで通って来た道の木の枝を折っといたから、それを目印にくだりゃあせわあない。」
と教えてくれた。
 このことばを聞いた息子は、このまま親を捨てていくことができんようになって、また背負って帰り、家の奥に隠した。

 それから何日かたってのことじゃ。殿さんのおふれが出た。
 「灰でぞうりを作った者には何でも望みのほうびをやる。」
 息子は、灰なんぞではとてもぞうりはできんと思ったが、母親が、
 「そりゃあ、ぞうりをにがりにひたしてあと、乾かしてから、そのまんま焼くんじゃあね。それをもっていきゃあええ。」
と教えてくれた。

 そこで、息子は母親に云われたようにして、殿さんに灰でできたぞうりを差し出すと、殿さんはばくだいびっくりしんさった。
 この息子は、灰のぞうりの作り方のほかに、水が出て田畑が流されたときの修理のやり方など聞いておったことも話したんじゃ。

 すっかり感心した殿さんは、
 「ほうびは思いのままに、おまえの好きなものを何でもやるから申し出え。」
といいんさった。
 「じゃあ、申し上げます。これは私の知恵でしたことではございません。すべて年老いた母親が教えてくれたことで、もう年寄りを山につれていくことはおやめください。」
 息子はいっしょうけんめいに殿さんにお願いした。

 それからは、年寄りを捨てに行かんでもよいようになって、みんなが年寄りをうんと大事にするようになったんじゃ。

さしえ 真砂小学校2年 N・K
語り手 斎藤隆資(赤雁)/石田秀吉(大谷)/石田高(大谷)

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