「お伊勢島

 お伊勢さんちゅう娘さんが、あの海の向こうに見える高島にお嫁にいったんじゃ。
 お嫁にいってしばらくすると、お伊勢さんは島の生活がさみしゅうなって、どうしても親の顔が見とうなったんじゃ。
 「帰りたーい。帰りたーい。」
 そんな思いが日に日に強くなっていったんじゃ。
 家の者に、
 「親もとに帰してください」
とも言えず、お伊勢さんは一人で泳いで帰る決心をした。
 といっても、どれくらい泳げばよいかけんとうがつかない。そこで島の人に、
 「自分の親もとまでは何里ぐらいあるんじゃろうかねえ」
と聞いたところが、
 「まあ、三里じゃろうねえ。」
というんじゃあ。
 「三里じゃとすると、この島が一里じゃから、三回泳いでまわれたら家に帰れることになる。」と思ったお伊勢さんは、それから毎晩泳ぐ練習をして、とうとう島を三周することができたんじゃ。
 「これなら大丈夫。」
と、うれしさのあまりそのまま親もとの方角に向かって泳ぎ出した。
 三分の二ぐらい泳いだところに小さな岩があったんじゃ。疲れたんで少し休もうとそれへ上がって後を振り向いたら、島がだいぶん遠くなっていた。前にはなつかしい里の灯がぼんやりと見えた。
 一あんしん安心と思ったとたんに力がぬけて、お伊勢さんはそのまま大きな波にさらわれてしまった。
 それからその岩はお伊勢島と呼ばれるようになった。
 おだやかな日には見えますがな。

お伊勢島

さしえ 鎌手小学校4年 S・N
語り手 石飛千代子(横田)/世良テイ(高津)桃谷魁智(津田)
石田高(大谷)/斎藤久子(金山)

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