「邯鄲夢の枕(かんたんゆめ の まくら)

 いまから六百年もまえのことじゃ。
 三星の城主の娘が向横田の城へお嫁に来ておられた。
 この二つの城は、はじめは仲がよかったんじゃが、父親の還暦祝いを向横田の城でやったときに兄弟げんかをした。
 それからというもの仲が悪うなって、とうとう兄の向横田が弟の三星を攻めはじめた。
 しかし、いくら攻めてもなかなか落ちないもんだから、三星からきた奥さんに相談した。
 奥さんがいうことには、
 「あなたがなんぼ三星城を攻めんさっても落ちないのは、あの城には邯鄲夢の枕というものがあって、これをあてて寝ると、三日先のことが手に取るようにわかるんです。そのために向こうの城が落ちないのですから、あなた、一緒に城に入ってその枕を盗みましょう。」
 向横田の城主は、袋に砂をたくさん入れると、奥さんと三星の城に向かったんじゃ。
 城内では、ちょうど土用干しの最中で、書物や什器などを座敷から縁側へ広げて虫干しをしていたんじゃ。

 向横田城主は城の外の竹やぶに身をひそめ、奥さんだけが城に入ると、父の前に手をついて、
 「私らあが悪かったので仲直りをしてください。」
とあやまったんじゃ。邯鄲夢の枕
 それから肩をもんだり、おもしろい話をしたりしている内に、父の機嫌がよくなってやがて居眠りをはじめたんじゃ。
 これを見て、城のそとの竹やぶにかくれていた城主に合図をすると、城主は竹やぶに砂をまいて、夕立がきたようにザァーザァーザァーという音をたてたんじゃ。
 「お父さん、夕立がきました。早く、干し物をしまわないとぬれますよ。」
ちゅうてゆり起こしたんじゃ。
たまげた父は、一度も手放したことのないたいせつな枕をその座においたまま、外へ飛び出したんじゃ。
 このすきを見て、邯鄲夢の枕を持ち逃げしたんじゃと。

 それから、何日かたって、向横田城の軍勢二百あまりが三星城に攻め入り、とうとうその城を落としたということじゃ。

さしえ 西益田小学校6年 H・U
語り手 石橋新一(川登)/石川寿保(向横田)

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